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2007年3月12日 (月)

フランスのグランドロマン小説

Photo_10「アンジェリク」全26巻
アン&セルジュ・ゴロン

「なんでそんなにパリが好きになったの?」と聞かれたら、その理由としてあげるのがこの小説、「アンジェリク」です。パリになどおよそ興味のなかった私だったけど、この本と出会ってから猛烈にパリに惹かれるようになりました。でも何でなの?…その疑問は未だに私の中にある。だって小説に描かれているのは今語られるような花の都ではなく、17世紀の、悪臭漂う未発達な都市の小汚い姿だから。作者のゴロン夫妻はパリの薄汚れた部分、暗部を容赦なく描写しているのに。それでも通りの名前まで細かく語られるパリの町並みにぐんぐん引きつけられ、頭の中でその様子をビジュアル化し、パリに行ってみたい!と強く思わせてくれた小説です。その後何度もパリを訪れるようになったけど、小説に出てきた場所を探して歩き回ったり、地図をじっくりながめては話に出てくる通りの名前を探したり、もう一度小説を読んでは歩いた場所を思い起こしてみたり、私の中でパリと「アンジェリク」は深い結びつきを持っている。たまたま訪れたパリのカルナヴァレ博物館では、アンジェリク当時のパリの様子を描いた絵をたくさん見ることができ、更にビジュアルイメージを高めることができたのも嬉しかった。

で、この26巻にも及ぶ大作ですが、話の筋書きがとても面白い。主人公はアンジェリクという美しい女性で、その波瀾万丈な半生を描いたもの。実在の人物ではないけれど、物語にはルイ14世を始め、宮廷模様を書いた下りでは実在の王侯貴族がたくさん登場する。そしてハーレクインロマンスにも匹敵しようかというドラマチックなストーリー展開はちょっと凄い。

そもそも地方の貧しい男爵家に生まれたアンジェリク。→政略結婚で嫌々大貴族ペイラック伯爵に嫁ぐが、大恋愛となり幸せの絶頂に。→夫が魔法使いの汚名を着せられて火あぶりの刑になり、アンジェリクも一気に無一文に。→浮浪者や盗賊団の仲間に入り、首領の情婦に。→しかし立ち直って女実業家として成功する。→いとこの侯爵と再婚し、華やかな宮廷生活。ルイ14世の寵姫になりかける。→夫が戦死。紆余曲折の末、奴隷として売られてしまう。→サルタンの奴隷としてアフリカでとらわれの身に。→辛くも脱出。今度は宗教革命に身を投じ、反国王派として戦う。→カナダに逃亡。新大陸に新しい人生を見いだす。……と、山あり谷ありの人生をたくましく生きます。そんなわけで、実は長い物語の中でパリの様子が語られるのは2・3巻のみ。後半のカナダ編では、ネイティブ・アメリカンがたくさん登場し、彼らにも興味を持ってネイティブ・アメリカンの本も読んだりしました。当時の歴史読書としてもなかなの価値がある本です。

とにかくいろんな面で影響を受けた、私にとってとても大切な物語。アンジェリクの強くたくましい生き方には憧れる。逆境の中、こんなにも強く運命に立ち向かっていけるものなのだろうか? 木原敏江が漫画にしたけど、これはちょっと受け入れがたかった。映画はなかなか面白かった。

この間からまた読み返して、パリの町並みに思いをはせている。読もうと思って本棚を見たら1巻がなかったので、どうやら誰かに貸しているみたい(それで写真が2巻のものなんだけど…)。でも実は全26巻のうち、真ん中辺の10巻分ぐらいは図書館で借りて読んだので、うちには全巻そろっていないのである。人生を変えた本なのに、いかんことだ。

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